人生の3分1を占める睡眠。
だから枕にはこだわったほうがいいですよ~。
よく聞く話ですね。
まあ、カッチカチの高さがあるコンクリートを枕にしたら当然寝にくいし、首も痛める。
多少やわらかさがあって、高さも自分に合っているのがいい、ってのは感覚的にわかります。
でも枕の中には2~3千円で買えるものもあれば、中には数万円もする高級枕も存在しています。
枕は大事だといっても、果たして数万円もする枕を購入する価値はあるのでしょうか?
価格によってどういった違いがあるのでしょうか?
単なる自己満足なのでしょうか?
調べてみました。
枕が違うと何が変わるのか?
そもそも、枕が変わることでどんな違いがあるのでしょうか?
まず、高級枕メーカーは自社の枕についてどのような効果を宣伝しているか調べてみます。
有名どころの枕メーカーのホームページを見てみると、どのサイトにも具体的な「効果」というものは記載されていません。
枕は医療機器ではないため具体的な効能・効果といったものをうたえません。
「睡眠サービス提供事業者が遵守すべきガイドライン」というものも存在し、しっかりと規制されています。結果、枕メーカーとしてはどうしても抽象的・感覚的な宣伝しかできません。
よって、これだけでは「高級」枕を買う理由としてはちょっと弱いな、ということになります。
ゆえに有名人に広告塔になってもらう必要性がでてくるんだな、というのが透けて見えます。
では次に、枕と睡眠の質、肩こり・首の痛みなどに対する影響についての研究を調べてみます。
(1)韓国人を対象とした調査では、標準的な枕を使用した人たちは、機能性タイプの枕を使用した人たちに比べて快適性や高さ・形状に対する満足度が低かったとされています。つまり、機能性タイプの枕を使ったほうが満足度が高くなることを示しています。
(2)また、枕の形状・デザインが首の痛みや睡眠の質に与える影響を調査したメタアナリシスでは、ゴムのような反発性のある枕を使用することで、首の痛みや覚醒症状・障害が軽減し、睡眠の満足度が高まることが示されています。つまり、適度に「反発」をする枕のほうが満足度が高まる可能性が高いことを示しているといえます。
(3)その他にも、枕の快適さと睡眠の質を調査した研究では、枕の快適さが低いと、睡眠の質も低くなることが示されており、さらにこの研究では、羽毛枕を使用していた人たちは一貫して睡眠の質が低いという結果もでています。
以上のことから、枕の違いが睡眠の質や、首の痛みなどに与える影響があることを疑う理由はなく、尚且つ羽毛枕のように反発があまりない枕よりも、ゴムのようにある程度の反発がある枕のほうが睡眠の満足度が高まる傾向にある、ということがわかります。
(1)A Survey of Koreans on Sleep Habits and Sleeping Symptoms Relating to Pillow Comfort and Support
(2)The effects of pillow designs on neck pain, waking symptoms, neck disability, sleep quality and spinal alignment in adults: A systematic review and meta-analysis
(3)Your Pillow May Not Guarantee a Good Night’s Sleep or Symptom-Free Waking
枕の違いによって睡眠の質・快適性・満足度・首の痛みなどが異なる
枕の値段の違いは何か
各枕メーカーの値段がどのように設定されているのか、原価がどれくらいなのかについて個別に調査することは難しい問題です。当然ながら個別に公表されているわけありません。
しかし、おおむね価格がどのように決められているか推測することは可能です。
- 広告費(CM、タレント愛用、高級ホテル採用など)
- 研究・開発費
- 原材料費(素材、耐久性)
- 製造・輸送コスト
- 儲け など
「原材料にこだわっている」というと聞こえはいいですが、それがそもそもいくらなのか、枕の価格の中でどの程度を占めているのかわかりません。
研究開発に費用をかけていたとしても、研究にかけた分だけ睡眠の質が上がるとは限りません。
また、前述のように枕は具体的な「効果」を宣伝することができないため、「研究をした」という事実を「宣伝」として利用しているという一面もあります。
枕を生産するのに、製造から物流にいたるまで効率化することでコストを下げ、それなりに価格を下げることは十分可能なはずです。しかし、価格を下げてしまうことで逆に粗悪に見えてしまう(=ブランド力を下げる)というデメリットも存在します。
「良い枕」だと思ってもらうために「高い価格」が役に立っている可能性があります。
枕の値段の高さが、枕の良さに相関するという根拠はどこにも見当たらない。
自分に合う枕をどうやって探すか?
自分にあった”正解”の枕を探すにも、無数に存在する枕をすべて試すということは不可能です。
オーダーメードの店に行くか、実店舗でひとつひとつ寝て試すか、高さ調整機能のついた枕で「保険」をうつか、はたまた何となくよさげなやつを買って試してみるか。
しかし、いくつかの研究によって示された、良い枕の共通点ともいうべきヒントが存在するのも事実です。
【良い枕のヒント】
・適度な反発力があったほうがいい
・羽毛はさけたほうがよい
・枕の満足度と睡眠の質は相関する
ただし、枕の満足度が睡眠の質に相関するからといって、枕の商品レビューと睡眠の質が相関するとまでは言えません。枕の商品レビューはあくまで「価格ありき」での話だからです。安ければ安いほど、その商品に対する期待のハードルは下がります。
しかし逆に言えば
・高価格帯(=元々の期待のハードルが高い)にも関わらず
・商品レビューも良い
という枕は、より”正解”に近づける選択肢、とも言えます。
・反発系
・羽毛はさける
・高価格帯、且つ商品レビューも良い枕
を満たせば、”正解”の確率は高まる。
結論
以上のことから
「高級枕が睡眠の質を高めるか」という問いに対しての、私の結論としてはこうなります。
枕の価格と睡眠の質が相関する根拠はないが、
高価格帯(かつ高レビュー)の枕は、睡眠の質を高める”正解の枕”である確率を高める。
重要なのは高級枕といっても、「高価格帯」であることであって、「高ければ高いほど」ではないことに注意してください。
1万円の枕が、2万円の枕に劣るという根拠は一切ありません。
高い値段を払うだけ払ったほうがいいというわけではありません。
まとめ
枕の違いによって、睡眠の質や首の痛みなどが影響を受けることはまず間違いないでしょう。
数千円の枕が自分にとって良くない枕という根拠はありません。
探せば自分にとって良い枕はきっと見つかるはずです。ただし、無数にある枕の中で、自分にあった枕を探すのは至難の業です。
そういう場合には
・反発系
・羽毛はさける
を条件として探し、より”正解”への精度を高めるなら
・高価格帯、且つ商品レビューも良い枕
という条件を足して探せば、より確率を高めることができます。
高級枕を選ぶことで、より高確率で睡眠の質を高める正解の枕に近づくことができる、といえそうです。
参考
ここでは、本記事において推奨する枕の条件を満たした枕をいくつか紹介しておきます。
①TEMPUR(テンピュール) オリジナルネックピロー
Mサイズ(主に男性向け)
Sサイズ(主に女性向け)
【価格】(M)14009円(S)13404円(2023年3月時点)
【素材】テンピュール素材(低反発)
【レビュー】Amazon:★4.3/5 (4653件) 楽天:★4.7/5(20件) ヤフー:★4.75/5(4件)
テンピュールはスウェーデンに本社を置く寝具ブランド。
NASAの科学者によって開発されたテンピュール素材を使用。
一般的な低反発素材よりも体圧分散性に優れているとされています。
テンピュール素材の作り方を知っているのは世界に10人以下(すべてテンピュール社員)、そのすべてを自社工場で生産し、ブランド力を維持しています。ブランドアンバサダーとして元野球選手の松井秀喜さんを起用。
②マニフレックス ピローグランデ
【価格】19853円(2023年3月時点)
【素材】エリオセルMF(高反発)
【レビュー】Amazon:★4.3/5 (642件) 楽天:★4.4/5(43件) ヤフー:★4.49/5(65件)
マニフレックスはイタリアにある創業60年を迎える寝具ブランド。
独自開発のエリオセルという高反発素材を使用。
仰向け、横向きなど頭をのせる位置や方向関係なく使用でき、使う人を選ばないのが特徴。
一般愛用者からの声として別名「しあわせのまくら」とも。
愛用者として野球選手の山田哲人選手、他数名。
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