貯蓄にもなって、万が一にも備えられる万能型として人気のある貯蓄型の保険。
貯蓄型の保険は、保険料を払い込んで満期まで保有しておけば、場合によって払った金額よりも多い金額をもらえる可能性があり、なおかつ保険期間中に病気やケガがあればその補償までしてくれるという万能さをもっています。
一見素晴らしい貯蓄型の保険ですが、一概に「お得」であるとはいえない商品です。
- そもそも「お得」とは何か
- 保険会社の儲けのからくり
- 貯蓄型保険の返戻率と銀行の利率の違い
- 保険の弱点
- 「お得」な選択とは何か
について解説します。
そもそも「お得」とは
「お得」という言葉が存在するとき、そこには異なる比較対象が存在することを意味します。
Aの選択肢を選ぶとノーリスクで100万円もらえる。これはお得でしょうか?
このとき、Bの選択肢だとノーリスクで300万円もらえるとしたらAの選択肢を選ぶ人は損になります。選択肢が2つならBの選択肢がお得です。
しかし、実はCの選択肢も存在していて、それを選ぶと同じくノーリスクで500万円もらえます。これだとCが一番お得。AやBもお金の数字は増えますがお得とはいえません。
つまり、お得かどうかを判断するにはそれ以外の選択肢の存在をまず知っておかなければなりません。そしてその選択肢の中でも優れているときに初めて「お得」といえるのです。
単純に数字が増えることが「お得」とはいえないということです。
保険会社はどうやって稼ぐ?
そもそも保険会社はどうやって稼いでいるのでしょうか?保険会社が儲かる仕組みを理解しておきましょう。
加入者の多くが損をし、ごく一部が得する仕組み
保険の本質は不利な方にお金を”ベット”するの同じです。
保険には「病気になったとき、死亡したとき」などあらゆる「たられば」があり、それがもし起きたときにはお金をくれるというものです。
しかし、この「たられば」は確率的に不利なものです。
この「たられば」の確率と、それが起きたときにもらえるお金は、アクチュアリーという数学のプロによって緻密に計算されており、圧倒的にお客が不利な勝負です。
ほとんどの人は起こる確率の低い「たられば」を並べて脅され、不利な賭けをさせられています。
つまり、とても”確率的に運の悪い人”は保険に入ってて得をしますが、大半の普通の人は損をする運命にあるということです。
保険会社の儲けのからくりは?
保険会社の儲けの仕組みはざっくりいうと以下の式のようになります。
儲け= 加入者が払った保険料 − 従業員の給料 − 保険の給付 + 株等の運用益、損
まず加入者から集めた保険料は、保険会社の従業員のお給料を払うために支払われます。さらに運悪く病気やケガになった人などに保険の給付が行われ、そこからあまったお金は株などの運用にまわされます。
この差額が保険会社の儲けになります。
いじわるな言い方をすれば、保険会社は人から金を集めておいて自分たちが損をしないようなギャンブルをしているわけです。
「保険の返戻率」と「銀行の利率」は別物
返戻率とは、払いこんだお金が、最後いくらになって返ってくるかを表す言葉です。
貯蓄型保険には返戻率が記載されており、満期まで保有しておけば払った金額よりも多い金額をもらえることが多いです。
例えば、返戻率が105%だと、100万円払い込めば、最終的には105万円でお金が返ってくることを意味します。
返戻率が105%と言われると、銀行の金利なんかよりも遥かに良く感じますが、これは誤解です。
銀行の「金利」は、預けたお金が「一年後」にいくらになるかを表しているのに対し、”返戻率”は”設定された期間を満了できたとき”に返ってくる金額を表しています。
つまり、返戻率を銀行と同じ一年間あたりの利率に換算すると、銀行の金利より少ない可能性もあるのです。
保険の弱点 インフレに対応できない
インフレとはモノの値段が上昇し、相対的にお金の価値が目減りすることを意味します。
今もっている100万円が、20年後に105万円で返ってきたとしても、20年後にモノの値段が2倍になっていれば、20年後の105万円は、今でいう50万円程度の価値しかないということになります。この場合、保険会社にお金を預けていた間に、20年後にモノを買う力(=購買力)が0.5倍、つまり半分になったということになります。
このインフレに対応できないのが保険の最大の弱点ともいえます。
モノの値段の上昇に合わせて、価値も上昇しやすい株などの資産(=インフレに強い資産)に投資をしておけば、お金の価値の目減りを防ぐことができます。
実際、保険会社自体も、加入者から預かったお金をそのままタンス預金しているわけではなく、株や債券に投資することで運用益を稼ぎ、インフレにも対応しています。
そうであれば、最初から保険会社を通さず、自分で株式投資をしたほうが得ではないでしょうか。
まとめ お得かどうかは、数字ではなく、購買力で考える
貯蓄型保険は決して万能ではありませんし、他の選択肢よりも一概にお得であるとはいえません。
貯蓄型保険を利用して、払ったお金が数十年後に100から105になればお得に感じるかもしれませんが、それがモノを買う力(購買力)が1.05倍になることを意味するわけではありません。
株式や不動産、ゴールドなどに投資するほうが、お金の価値の目減りであるインフレにも対応しやすく、状況に応じて現金化しやすい柔軟さをもっています。
保険会社は集めたお金で、どのように従業員を養い、どうやって儲けているかを知ったうえで、他の選択肢の存在を知り、自分の購買力を高める選択肢を選ぶべきでしょう。
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